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戦場の詩 〜My name is ・・・〜
あたしは、お父さんとお母さんの名から一文字ずつ漢字をもらったこの名前が、無性に気に入っていた。
西暦2215年。二十三世紀、日本――。
対コンピュータ戦真っ盛り。対コンピュータ戦などという安直な名前を誰が最初に口にしたのかは分からないが、ともかく、簡潔に言えば発達したコンピュータと、追い込まれた人間との、戦争である。
この時期、歩結は十四歳だった。
両親ともそれなりに高名な学者で、自宅からしばらく歩いた場所に研究室という名の離れを持っていた。そこで歩結はいつも数学科と理科を両親から教わっていた。物理学者と科学者である両親の血は明らかに歩結に流れていて、歩結の小さな脳は、学問を拒むことなく吸収し続けていた。拒むどころではない、歩結は、好きだった。学ぶことが。
その才を使う道を、思案していた頃(21世紀でいうのならば、就職口を模索するのと、同じだ)既に意思を持って氾濫していたコンピュータによって、自宅を崩壊された。
幸い歩結と両親という、三人だけの家族は研究所にいて誰もお互いを失うことはなかったのだが、帰る家を失くしたという事実は拭えない。毎夕仲良く3人で帰宅するその家には、今ではすでに黒煙を上げているその家には、木彫り細工の可愛らしい額に、母がいそいそと飾った大事な家族写真が、あったのに。
歩結は、自宅を失ったと認識して、くらりとなった。
住むところは、これからは研究所でもいい。
でも、本宅には思い出がいっぱいあったのに。
誰が、下らないと思うだろうか。
歩結は家族が大好きで、勉学ができて、この日、今まですごく身近であったコンピュータという【生き物】を恨んだ。
だから歩結は、対コンピュータ部隊のある日本国軍政府に、入隊を志願したのだ。
ただ、入隊にあたっての規約を見て、ぞくりとしたことがある。この体の半身を日本に捧げるという誓約のために、その存在を表す名前を、半分捨てるということ。要は、両親が生まれてきた子供に素敵な夢を託す為に選び取った、その名前の意味を捨てる。いや、預けるのだ。この戦争が終わったときに帰るべき家に、置いて来い、という。軍部の寮へは基本的に私物は何を持ちこんでも構わなかった。ただ一つ、部屋のネームプレートに自身の名前を、戸籍通りに記すことは許されなかった。
ネームプレートには、アユ・タツミと記されている。
認識コードナンバーはR-JT000。
この時期は、コンピュータもまだ脆かった。コンピュータの弱点である【核】を、人間が理解していたからだった。これから1年もすれば、それはやがて分からなくなった。なぜなら、今まで人間が作っていたコンピュータはほとんどいなくなり。コンピュータらが自身の意思で無機質な子供を作り出してしまったからだ。新たに生まれ来るコンピュータの【核】がどこにあるか分からない人間は、ただただ苦戦するだけの時代となる。コンピュータに致命傷を負わせるには、【核】を攻撃するしかなかった。
だから、比較的に安全な時期だった。軍隊内の人間の気も緩んでいた。
アユは元々人懐こい性格だ。小柄で色素が薄くて長く伸ばした髪もふわふわと揺れている。なんてことない、誰もが来ている規定の制服である軍服に、アクセサリーを可愛らしくつけてみていたアユは、ちょうど学校で友人を作るのと同じ要領で軍隊内での友人を増やした。
「アユ、聞いたわよ」
食堂での大好きな日替わり定食を平らげたあと、軽快な声とともに、アユは馴れ馴れしく背を叩かれて振り返る。拍子に衣服を装飾する趣味で作り、趣味で身につけている缶バッチがカシャンと軽やかな音をたて、こぼれるような長い波を描く髪が、ふわりと揺れた。
「次の成績次第で、昇格が決まるんだって?」
ぱちん、とウインクして言われ、アユは驚いた。
「ミサ、そんなのどこから…」
「シノが言ってたのよ。会議室前を通ったときに聞いたって」
「驚かせてやろうと思ったのに」
ばれちゃったのか、とアユは肩を竦めて見せる。うん、と頷いて、ミサは続ける。
「今回、人事の異動が激しいみたいだからね」
年に2度、軍部内で行われる試験では、自分の得意分野を存分にアピールして、昇格を狙うチャンスだ。アユは特別昇格を望んでいなかったのだが、試験内容に捉われないで済むため、必然的に自分の好きなことをしたまでだ。やはり好きなことには力が入る。自然と総督の目に留まったらしい。なんだかんだで昇格の報せが手元に来ると、喜ばない理由なんかなかった。
「他には誰が?」
ミサは四姉妹の三女で四女のシノがよくよく噂を仕入れてくるので、よくよく情報提供をもらっている。
アユは、噂話は好まない。しかし今回は別だ。自分も幹部として抜擢されるかもしれないということは、幹部内でもうまくやっていかねばならない。降格されると、軍の中での居心地が、おそらく頗る悪い事だろう。
「一番みんなが注目してるのは、年少隊の隊長かな」
「誰なの?」
「スイコ・ムロイ」
「スイコ・ムロイ?」
全く同じ調子で口にする名前は、あまりにも軍内で有名な名前なので、しっくりと口に馴染む。
入隊してから日は浅いのだが、容姿端麗・頭脳明晰・その上運動神経も銃器の扱いも絶品と来ている。右翼総督であるイツヤという男が、やたらとかわいがっているという噂だ。
アユは、ちらりと視線を寄越した。
食堂の奥、隅の席で、まるで一匹狼のように窓の外を眺めている。タールの空だ。その目に映っているものが空なのかその向こうなのかアユには分からない。スイコという女は、皆から敬遠されていた。
いつも一人で、ニコリとも笑わなければ、自発的に誰とも会話を試みることがない。
「あたし、あの人苦手」
不意に言われて、スイコに見入っていたアユは、はっとしたが、ミサはそれについては何も言わない。ミサもアユに倣ってスイコの端麗な横顔を、少しだけ険しい顔で見ていた。
「どうして?」
アユは問う。
「だってなんだか怖いじゃない」
「まぁ、ね」
「隊長はサ、やっぱもうちょっと親しみやすい人がいいよ」
イツヤさんみたいにね、と言外に含んであるのが聞こえた。イツヤは年中隊の隊長であるから、アユやミサの上司には到底ならない。隊は、年齢別にわけてある。アユたちが年中隊に入る頃、イツヤも年長隊に異動されていることだろう。
「アユ、今から暇? 部屋に来ない?」
一転明るい声で言われて、アユは反射的に笑顔で頷いた。じゃあ行こうと促すミサに従ってアユは食堂を出ようとした。肩越しに振り返る。揺れた自分の髪が視界に入って、背中に落ち着いた髪の向こうにスイコが見えた。自分とは違う、まっすぐな髪が、少しだけ開けられた窓からの風に、寂しく揺れている。
アユは、ミサの背中を追った。
人事異動の結果は、広間で行われる、任命書と幹部を表すバッジを貰って、皆の前で挨拶をさせられる。
そしてその異動に伴って、部屋割りも変わる。
同じ棟内での小さな引越しを夕方までやって、アユは同じく引越しをしているスイコを廊下で見かけた。
少し躊躇したが、一歩踏み出す。
「スイコ、」
ふ、と顔を上げられ、アユはどぎまぎした。正面から顔を見るのは初めてだ。どこか、敵であるという機械にも似た鉄色の瞳をしているように見えた。
「……スイコ、って呼んでも、いいかしら」
「あなた、副隊長の?」
「アユ。アユ・タツミ。」
「あぁ、ごめんなさいね。人の名前おぼえられなくて」
淡々と言われて、アユは苦手意識を持たざるを得ない。会話をすることは否定されていないのに、心苦しいのだ。こうした雰囲気にアユはなれてはいない。
それでもアユは、スイコとは仲良くしたいと思った。
無口な上司は、部下たちからあまり評判がよろしくはなかった。頼りにはなるとは思われていたらしいが、人望は厚く無かった。些細な悩み事は皆アユの元へ持ってくるし、相変わらずスイコはいつ見ても一人きりだ。一人きりで、何か遠くを見るような、近く見るような、そんな目をして、食事をしていた。
アユは極力スイコとの会話を試みた。
何でも語った。
父親のこと。母親のこと。自分は一人っ子だということ。爆弾処理が得意だということ。こう見えても力持ちだということ。趣味で色々と装飾品を作っているということ。友達のこと。部下のこと。上司のこと。これからの日本のこと。軍のこと。自分の名前は、両親の名前からもらったということ。そしてその名前を自分はえらく気に入っているという事。
「だけど、漢字は、取り除かれちゃうじゃない? 軍部に入ると。それがなんとなく、つらいんだよねぇ」
苦笑してアユは言う。場所はスイコの部屋で、時間は夜が更け行く頃だ。スイコは最低限の返事しかしないので、無駄な相槌すら打たない。アユは一人で喋りっぱなしだった。
「折角の日本の文化じゃない? 漢字って。まぁ、カタカナだって平仮名だってそうだけどさ。でも、漢字は、ね…、お父さんとお母さんの思いがいっぱいこもってる、って教わってたの。うち、みんな仲良かったから」
失くした家のことを思い出す。
あんなに思い出のつまった宝箱が跡形もなく焼き焦げて、真っ黒に燃え尽きた思い出写真たちを失くしたことが、なかなか辛かったことも思い出す。
不意に、スイコが口を挟む。
「私は、大量生産された子だから」
「え?」
思わず聞き返してしまう。
スイコは一呼吸分黙って、口を開く。視線はアユを見てはいなかった。表情も、いつもとさして変わらない。
「母上は、特別戦闘員を産む道具だから」
「……あぁ、」
アユは頷く。軍部では、3人の女を保護している。精神面・体力・知力・運ともに今日本に存在している女たちの中から選抜した、天才的にたくさんの事柄について才能を持った女たちだ。彼女らはとにかく孕ませられる。そうしてひたすら自分の才を受け継ぐ子供を生むのだ。本当ならば人造的に人間を大量生産してもいいのだが、それだとコンピュータと同じになるから、と却下された。
そうして、その何人かの子供の成功例が、スイコだ。
「きっと父上も母上も、人並みの愛情なんて持っていないなんじゃないかな」
自嘲するように唇の端を上げたスイコを、思わず見つめてしまった。
初めて笑顔を見たのだが、あまりにも悲しすぎた。
「でも」
なんてことを言うの、と唇を震わせて、アユはスイコに詰め寄った。
「でもスイコには名前があるわ。記号じゃないのよ、スイコ、って名前が、あるじゃない」
四姉妹のことを知ってる? と鼻息を荒くして問うと、意外にもスイコは知っていると頷いた。淡白て、薄情そうに見えて、部下のことは把握しているらしい。もちろんアユはスイコを薄情だとは思ったことは無いが。
四姉妹というのは、スイコを生んだ母親とは別の女が産んだ4人だ。父親が同じなので、この4人は仲がいい。ただ、彼女達が不幸だと思うのは、名前が一目瞭然で記号であるからだ。イチコ・フタミ・ミサ・シノと名前を連ねる彼女は、きっと漢字で表記するとしたら、漢数字を連想させるに違いない。
友人のミサのことを、ここでこういうのもなんだが、事実なのでしょうがない。しかし、本人には到底言えるはずもない。女の子は名前に夢を持つ。四姉妹は自分の名前の話をしたがらなかった。
「スイコはスイコよ。素敵な名前じゃない。どんな漢字を書くの?」
「そんなの、どうだっていいでしょう?」
「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ」
呆れて思わず大きな声が出た。
言ってしまってからスイコが怒り出しはしないだろうかと思ったが、スイコは表情を変えずに肩の力を抜いた。
「私が死ねば、分かるよ」
「じゃ、知りたくないわ」
ズバリと即答したアユに、スイコが、え、と顔を上げる。アユは、憤然と息を吐き出した。
「死なせないわ。だってあなたは一人の人間で、あたしの上司で、あたしの友達なのよ。知ってる? 副隊長にはね、隊長を補佐するって義務があるの。守れってことと、同じようなものよ」
「人望のない隊長でも?」
茶化すようにスイコが言う。
「守らせてよ」
スイコは一瞬不快気に眉を寄せた。
アユは、無意識にも近い状態で自分が口にしたセリフに自分でも戸惑った。
でも、たしかに この気持ちは嘘じゃなかった。
守りたいという気持ちはホンモノだった。
いつか食堂でみた、孤狼の横顔は、あまりにも淡くて胸がきゅっとなったから。あのタールの空に、溶けてしまわないよう。
「アユは、どんな字を書くの」
座りなおして軽い調子でスイコが言うので、アユは見つめていた瞳から力が抜けていくのを感じた。
「へ?」
「アユ、て、あんたのお気に入りの名前なんでしょ? どんな素敵な字を書くの?」
「え、あ、うーんと」
言葉を濁しながら、こうした言葉のキャッチボールに、アユの頬が緩み、唇があどけない笑みの形になっていく。
「……んー、とね…」
充分に悩んで見せて、答えを待っているスイコの視線がアユを捕らえたとき、アユはにこっと笑った。
「【あ】に、【ゆ】!」
「…………は?」
「えへへっ」
声を上げてアユは笑い、一瞬ほうけてしまったスイコも、やがて唇を和ませた。
死んだら分かるよ、というスイコと同じ言葉は使わない。
あたしに死ぬ気はない。
それに、部下たちに不評なスイコがあまりにも普通の女の子だから、アユには言えなかった。自分のことを「死んだら」なんて言えちゃう、ちょっと悲しい女の子だから、尚更。
言えばきっと、悲しがる。無表情で彼女は、悲しがってくれただろうから。
スイコが、とっつきやすくなったとミサがアユに耳打ちしたのは、それからまもなくのことだった。演習のときも、中々いいコンビで、実戦が楽しみだな、と上司のツカサに笑顔で言われた。戦争を楽しみにしないでくださいよ、と参謀に言われて罰が悪そうに頬を掻いたツカサに、スイコと2人で隠れて笑った。
それからしばらくして、コンピュータたちの攻撃が始まった。
部下を数人奪われる戦闘がひと段落ついた夜、珍しくスイコがアユの部屋を訪ねてきた。
「アユ、相談があるんだけど」
「珍しいわね。どうしたの」
室内に促して、ソファへと促す。スイコは一瞬思案して、それからゆっくりとソファに腰を沈めた。向い側にアユも腰掛けて、テーブルの上に置いた菓子をスイコに勧めたが、軽く手を振って断られた。
「部下のこと?」
「ううん、」
短く返答されて、アユには分かる。数割は、失った部下のことで、あっているのだなぁと。
「私、思ったんだけど」
何を? なんて野暮ったい相槌は打たない。
「日本は、もうだめよ」
「………」
どうして?とも聞かない。スイコは、膝に肘をついて、両手の指先を祈るように絡ませて、その上に額を乗せた。たちまちスイコの表情が見えなくなってしまったが、彼女が思いつめていることが分かる。
「きっともう、だめだと思う。このままじゃ、ダメ……。だから私、考えたんだけど、でも、それはそれでとてもキケンなのよ」
「教えて? スイコ」
スイコは顔を浮かせ、合わせた指先で、口元を隠した。視線は絨毯を沿っている。
「機械を、使いたい」
「機械?」
「倉庫にあったでしょ? 時空転移装置」
「失敗作?」
長年の人間の構想であったタイムトリップのマシンを、実験として使ってみたのはいいのだが、犬も鳥も人間も誰一人として戻ってこなかった。失敗作というにはまだ不十分だが、成功とも言えない。ムダに人材を減らせるような状態じゃないので、そのマシンは結局倉庫行きだ。外国も、同じ結果だったらしい。くぐった人間は消えるのだが、戻ってくることはなかった。
「失敗作かどうか、私が確かめる」
え、とアユは顔を上げた。
一度、またスイコは逡巡してから、視線だけで、どうだろうとアユに訴えてきた。
アユはなんとも言えない。
「どういうことなの?」
思わずテーブルに手をついて、身を乗り出した。スイコも、頷く。不十分な説明だということは自分でも気がついているのだろう。しかしうまくまとめることができなくて、スイコも当惑しているのだ。
「もともと、コンピュータを発明したのは日本じゃないわ。日本は寧ろ、外国に遅れてた時代があった。」
アユは、歴史のことはさっぱりわからない。
「東京時代?」
「いや、その頃はもう大分追いついてきてる。その少し前、かしらね。私も受け売りだからなんとも言えないけど」
「少し前っていったら、鎌倉?」
「少しは史学も勉強した方がいい」
「………ごめんなさいね」
「幕府の末頃よ。鎖国してた日本が、開国したの」
「鎖国って何」
スイコは呆れた、と肩を竦めた。
「とにかく、国を閉鎖してたのよ。世界で孤立してたようなものよ。だから何も入ってこなかった。コンピュータも」
アユは、あ、と開けた口を閉じた。
皆まで言わずとも、察することができた。
「他の国は?」
「それは方法がまだ思いつかない」
「わが身かわいさね」
「呆れる?」
咎めるわけではないが、鋭い視線でスイコはアユに問うた。
アユは、さぁね、と答えて、菓子を頬張る。噛み砕いて飲み込む間があって、それからアユは改めてスイコを見つめた。
「でも、もしかしたら、そうかもね」
日本はもう戦ってもだめなのかもしれない。
他の国だって、どんどん倒れた。人類が滅ぶ日は近いのかもしれない。
だからスイコの言うように、危険なマシンを使って開国寸前の日本に飛び、開国を阻止さえすれば。少なくともこのような戦争は遅らせることができるかもしれない。しかし、開国を阻止したとなると歴史が変わる。歴史が変われば自然、生まれるべき人が生まれず、死ぬべき人が生きる。そうすればスイコもアユも、生まれないかもしれない。それでも。
「価値はあるわ。」
「でも、アユ……」
「それって、おもしろそうだわ」
「………」
提案したスイコの方が戸惑ってしまった。
「きっと行けるわよ、スイコ!」
親指をグ、よ立ててウインクされて、スイコはようやく笑みを取り戻した。
「……ありがと、アユ」
「どういたしまして」
「きっかけになった」
うん、とアユは頷いた。
この考えを捨てずに済んだ。
スイコは用件だけで、アユの部屋を去った。
しかし、スイコはしばらくその案を自分の胸にしまう。その案を皆に発表するのは、もう少し先のことになる。
「みんな、揃ったァ?」
廃墟の前に、各隊毎に整列させた部下たちに、アユは高らかに声を上げた。肩に担いだ重たい銃器が、動くたびにがちゃりとその鉄の体を撓らせる。
スイコが、無言でアユに目配せして、頷く。
アユも、頷いて、整列した部下達を見渡した。
「さて、出撃よ!」
場にそぐわぬ軽快な声で、アユは迷彩帽のつばを親指で押し上げた。灰色の空間に覗く太陽の力は弱いけれど目を細める。
「死ぬなよ、みんな!」
アユは、最期の戦の出陣のとき、震え上がりそうなくせに笑っていた。
完
完
高校1年のときに書いたような気がする。
これは、もう一人の女の子視点の話も書こうとしてやめたやつだなぁ。
めんどうで